長岡の京(みやこ)をあとにしたのは朝もまだ早くのこと。
やわらかな土のにおいをなつかしくおもうまもなく
とものものたちととおなじせまい乗り物にゆられて
遠い遠い国にたどり着いたのでした。
・まぁ、ずいぶん毛むくじゃらのふとっちょさんね!
・あたしたちのとなりに家敷を構えようなんてんじゃないでしょうね!
・大きくなって日陰ができたらいい迷惑だわ〜
ほっとしたのもつかの間、容赦のない言葉を浴びせられて
筍の姫とそのおつきの者たちは旅の疲れがいや増してくるようでした。
あずまの大きな京に暮らすアネモネたちは日当たりのよい田んぼの
あぜ道をわたるここちよい風も知らず、きらきら光る小川の流れなどを
見たこともありません。
筍の姫とおつきの一行は生まれ育った竹林が風に吹かれてさらさらと
音をたててしなる姿を偲んではただため息をつくばかりでした。
するとまたもやだれかが声をかけてきたのです。
・どろんこだね
・かじるんじゃないよ、まずいから
・ばりばりしてみたいな!
・またきたわ!あっちいってよ!
・このちびったらあたしたちのことさんざん齧って!
・春先の葉っぱ3枚返してよね〜〜
・こっちもね!
あずまの国は怖いところだと聞いていましたが、つぎつぎと
降りかかる災難に涙もかれてしまいました。
こうして身の置きどころがない気分に沈んだ姫たちを待ち受けて
いたのは一掴みの糠と笑うように煮えたぎった大鍋であった
ことはお察しの通りです。