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『タマロッド 叛逆』に見る民衆の熱狂、そして宴の後。エジプトはこれからどのように展開してゆくか。#エジプト #革命

国家とよばれる任意団体の最大行事、それが『戦争』だ。

『軍』の論理ですべてが貫かれていると、それをスムーズに
遂行することができるとかんがえられているので、お隣の寒い
半島の国ばかりか「自由」を謳う大国もみなおなじく『軍』の
論理に絡め取られている。

ちがうのはそれに異論を唱えてもたちまち殺されたりはしない、
くらいのことで、『国家』の運営を楽にしたいと考える愚かな
人びとは似たような道筋を選ぶこととなる。
(だいじょうぶか、日本)

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今朝の朝刊各紙にエジプト大統領選の結果、シシ氏が
勝利した報道が掲載されているけれど、これまではあまり気に
とめないできたアラブ社会の政変がすこしちがって見える
ようになった。

それは知人のジャーナリスト田保寿一さんが数年来エジプトに
通いながら撮影してきた現地映像を見せてくれたからだ。

はるか遠い、地球の裏側で、同時代を生きる青年や老人、
お姐さんおばちゃん、おばあちゃんたちが『自由を!
日々のパンを!』とさけびながらこぶしを振り上げている。

アラブ社会でこのように女性たちが街頭デモに参加し、
そればかりかシュプレヒコールのアジテーションに声を
あげて群衆デモをリードするすがたにおどろく。
みな発声が豊かなのはコーランの斉唱のおかげだという。
だれもがスピーチの名人だ(はじまるととまらない)。

映像の女性はみなヒジャブで髪を被って敬虔なイスラム教徒
を表しているけれど、じつは以前はそうでもなかったのに
ここ数年女性たちが変わってきたという。

民衆に自由を!
旧体制を打破!
変革を求める、いっぽうでリーダーは複数の妻帯をし、若者の
誕生日パーティでは手作りケーキにキャンドルを灯してハッピー
バースデイと英語で合唱する。


  
  (↑ click )『タマロッド 叛逆』ドキュメンタリー映像β版は72分

街頭でとつぜん息子を殺されて身も世もなく嘆く父、母。
どちらの陣営も明日の見えない不安の中で苛立ちをぶつける。

エジプト人はアイデンティティをさがしている、
ゲームなんだ、と大きな目を見開いて語る青年。

たいせつなものを手に入れるためには犠牲が必要なのだと
老俳優はしずかに語る。
じぶんにできることは、良い映画を作ることだ、とも。

理解しがたい現実を、そのままとりあえず受け入れてゆこうとする
民衆の逞しさといったものが伝わってきた。
軍事独裁政権誕生の予感もするシシ大統領選挙の陰にも
沈黙の大衆が控えていて、広場で熱狂に身を任せるもの
ばかりではないこともかんじる。

民衆に自由を、と市民運動のつもりではじめた『タマロッド』。
謎の多いムーブメントの広報を担った若い女性がことばを
選んで民主主義の実現のための理想を語るのが印象的だ。
エジプトらしい民主主義とはいったいなにか、強大な軍事政権の
誕生を喜んでいるように見えるのがふしぎでならない。

映像、出版関係者のこじんまりとした試写会ではこの複雑な
ドキュメンタリーに戸惑いの声続出。
革命と聞くと現場に行きたくなる、という田保さんの体を
張った貴重な映像をどのようにしたら作品として定着できるか。
課題の多い、けれど魅力的な素材だとかんじる。

組織を意のままにうごかす、それが『軍』の論理であるとすれば、
若者の革命ごころに火をつけるなどというのはじつにわかりやすい
戦略であったのかもしれない。
どっちに転んでも邪魔になれば排除すればいいだけのこと。

催涙弾が飛び交い重傷者死者が出るデモをスマホで撮りながら
さらに熱狂する民衆たち。

地球は熱い。

author:信愛書店 en=gawa, 11:10
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