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「芽も羽も萌え出づる季節」  蔦谷耕書堂  
マメに暮らすとこうも風雅なときを味わえるのか、と
季節の彩りを届けてくださる蔦谷さんの一日です。


「芽も羽も萌え出づる季節」   蔦谷耕書堂

春は萌え出づる季節。
という言葉の通りに、春というだけでいろんなものが萌え出でる。
油断していると、「別に萌え出でてくれなくても」というものまで
どんどん芽吹いてしまう。



たとえば、豆類なんかは、実が種そのものであるから、よく芽吹く。
このあいだグリーンピースを買ってきたら、パックの中で6粒が既に
芽を出していた。
私は芽が出ているものを見るといつも、それをそのまま伸ばしたく
なる。そこでこのグリーンピース6粒は食べてしまわずに、小さな
プランターに蒔いてみた。自然に発芽したくらいであるから成長は
順調だ。1週間ほどで土の上に葉を出し、4週間で10僂曚匹猟垢気
なった。そろそろ支柱を立てなくてはいけない。
また、例年通りのウカツさでじゃがいもも芽吹かせてしまったので、
これも植えておいた。



萌え出づる春、私のベランダ農地の野菜も、どんどん萌え出づる。
真冬には、寒さからその身を守るのに精いっぱい、といった感じ
だった葉が、春の日の光と暖かさで、ぐいぐい成長し始める。
冬の間、少しずつ収穫して使っていたミックスレタスの畑(単なる
プランターだが)も、日々その葉を茂らせていく。

  

ある朝、収穫したそれをむしゃむしゃ食べつつ、「もうどんどん
食べなきゃ、あっと言う間にわさわさにになるなあ」と、食卓から
ベランダを見やっていた私は、葉とは違う色のものがあるのに
気付いた。
眼鏡をかけて見ると、レタスの葉の裏に、アゲハチョウがとまって
いるのだった。
しばらく見ていたが、蝶はずっと動かずじっとしていた。
ひらひらと飛んできて、そわそわと花や葉を巡り、ほどなく去って
いく、という見慣れた姿ではない。葉の裏に、羽を下にしてひっそりと
とまっているところは、蛹から出てきて、羽を伸ばしている最中の
姿にも見える。ちょうど、越冬した蛹から、蝶が羽化する季節である。
しかし、畑を毎日見ているが蛹はなかった。だいたいモンシロチョウ
じゃあるまいし、アゲハチョウなんだから、レタスやサラダ菜に蛹を
かけたりはしない。当家のベランダには山椒も夏蜜柑もあり、
そこに蛹をかけるなら不思議はないが、そちらにも蛹はなかった。





結局、「どこかで羽化して少し飛んでここまで来たが、まだ朝で
気温が低いから思うように羽が動かせないため、葉にとまって
少し休み、気温が高くなるのを待っているのであろう」と推理し、
蝶をおどかさないよう静かに近づいて写真を撮った。
ズームすると、羽が鮮明に見えた。温かな黄と橙の色、清々しい
青灰色に、くっきりと黒。植物の若芽のように、うぶ毛さえ
まとっている。
アゲハチョウの羽も、春に芽吹くものの一つなのだなと思った、
春の朝であった。

(2009.3.27)
author:信愛書店 en=gawa, 12:42
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