第6回の高円寺純情出版界にて杉並北尾堂の北尾トロさんにお話をしていただきました。
”高円寺純情出版界”は出版・流通・書店の周辺の話題を取り上げて、当事者に
事実に即したレポートと意見を語っていただく業界内有志の研究会です。
今回は作家でオンライン古本屋の草分けでもある北尾トロさんに進行中のプロジェクト
『高遠 本の家』について、そしてそこから見えてきたことなどをお話いただきました。
イングランドのウェールズ近くにある
ヘイ・オン・ワイを訪れてから、いつか日本でも、と
抱いていた夢に一歩踏み出した古本屋のオヤジたちの奮闘記、というわけです。
本屋も、コンビニもない。
”駅前”というのが高速バスの停留所前のことだったりする、そういうちいさな
高遠のまちで、まず住んでいるひとが”本屋”を大歓迎してくれたはなし。
廃業した本屋に他業種が入らないように、店を買い取ってしまったまちのひとが
”そこで本屋をやってほしい”と話をもちかけてきたことから”駅前”に引っ越す
ことになったはなし。
グリーンの上着が北尾トロ氏
数々のルポルタージュをヒットさせながら、個性的な本の出版や実験的な古書店を
イベントとして企画してきたトロさんです。
それらの体験から言えることとして、渋谷PARCOであれ、高遠であれ、商品の本が
魅力あるいいものでなければ絶対に売れない、としみじみ語ってくれたことが
印象的でした。
古本村はヨーロッパ各国にいくつもできているとのこと。
Richard Booth(リチャード・ブース)氏が初めてヘイオン・ワイで古本村を手がけて
いまでは本好きな家族が1日中楽しめる観光スポットとしてたくさんのお店が
賑わっているそうです。
ご縁があって高遠でスタートした”本の家”におとなりさんができるのはいつでしょうか。
”本好きなひとが、お客として仕事として集まって、ちゃんと生活サイクルが
成り立つこと”を目標にオヤジたちの奮戦は続きます。
いまをときめくオンライン書店、古書店の盛衰についてもリアルな舞台裏を
覗かせてくれましたが、さて、問題はここから自分に向かいます。
本の流れが、作ることも含めて音を立てて変わりつつあるなか、その変わりようを
しっかりと見据えながら、一方で変わらない普遍性というものがあるとしたら
それはなにか?
ヒトだけが文字や言葉で伝え、残そうとしたものとは?
(あるいはそれを”未練”と呼ぶのがふさわしいような気もしますが)
『本』がそういったおもいをことばや図像に換えて定着させたものであるなら
それを定着させない生情報のまま光の速度で解き放ったのが
web上に氾濫する”情報”です。
(世界一多いといわれる日本語のブログなどその最たるもの!!)
『本』とともにある幸せを分かち合いたい、それが純情出版界に集まるひとの
心情だといえるかもしれません。
今年度もユニークな切り口で業界の側面・背後に迫ります!